interview

インタビュー

名古屋徳洲会総合病院 脳神経外科

副院長天野 貴之部長

新しい脳血管内治手術 フローダイバーター治療・WEB治療を導入
「手を抜かない治療」で患者さんに寄り添う

名古屋徳洲会病院脳神経外科では、フローダイバーター(血流改変ステント)治療やWEB(Woven EndoBridge)治療に取り組んでいます。フローダイバーター治療・WEB治療は、デバイスを留置し、脳動脈瘤の血流を減らして病変を消失させる新しい脳血管内治療です。

患者さんやご家族を思い、困難なときも強い意志で「手を抜かない治療」をやり遂げるのがポリシーと語る天野貴之副院長に、取り組んでいる治療やこれまでの経歴、病院の体制について伺いました。

脳動脈瘤に、フローダイバーター治療・WEB治療を導入

私が脳神経外科医になった約25年前、動脈瘤の治療は開頭クリッピング術が主流でした。ちょうど、脳血管内治療が導入された時代です。脳血管内治療は、動脈瘤の中にカテーテルを挿入して細い金属コイルを充填する方法で、開頭手術に比べて傷が小さく、患者さんの負担が少ない利点があります。一方で、開頭クリッピング術に比べて根治率が低く、動脈瘤が数年後に再発するリスクがあるといった問題点がしだいに明らかになりました。

そこで近年、新しい脳血管内治療として、フローダイバーター(血流改変ステント)治療やWEB(Woven EndoBridge)治療が登場しました。フローダイバーター治療は、動脈瘤ができている血管にデバイスを留置して、動脈瘤への血流を遮断する治療法です。小さい動脈瘤であれば約3か月、大きい病変であれば1年から1年半で動脈瘤が消失します。WEB治療は、メッシュで作られた風船状のデバイスを動脈瘤の中に留置し、動脈瘤内に流入する血流を減らす方法です。フローダイバーターが留置しにくい 血管の分岐部にある動脈瘤や、動脈瘤の入り口 が広い症例にも適しています。

当初、フローダイバーター治療は、10mm以上の 巨大な動脈瘤に対して認可されました。2020年に5mm以上の動脈瘤に適用が拡大され、一般の市中病院にも浸透しつつあります。フローダイバーター治療は難易度が高く、高度な技術が求められる方法です。当院はフローダイバーター治療の認可施設であり、日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医 でフローダイバーター治療実施医の認定を受けた私が治療を行っています。

フローダイバーター治療やWEB治療はともに、カテーテルを使って留置する方法で、開頭手術より患者さんの負担が少ないメリットがあります。 また、フローダイバーター 治療は処置の際、脳動脈瘤に触れないので、慣れた術者であればクリッピング術やコイル塞栓術、WEB治療にくらべて、術中に動脈瘤が破裂するリスクが少ない治療法です。フローダイバーターが導入された当時、ステントに血栓ができて脳梗塞になるケースや、脳動脈瘤内に入る血流を制御する際、血流が急激に増えて脳出血がおきるケースがありましたが、 3代目になる現在のデバイスでは、ステントのメッシュ部分のコーティングにより、合併症 が減りました。

フローダイバーター治療とWEB治療のデメリットは、血液をサラサラにする抗血小板薬の服用が必要な点です。また、動脈瘤への血流を減らして血栓化するのを待つ治療なので、処置によって動脈瘤内血流量は 約8割下がりますが、術直後には動脈瘤が完治せず破裂する可能性が残っています。WEB治療では、バルーン型デバイスの大きさのバリエーション が33タイプ に限られ、合う形の サイズがない動脈瘤には留置できません。長期予後は今後の統計データをみる必要があるでしょう。

祖母の執刀医であった恩師の教えを守り「手を抜かない治療」を

私が名古屋徳洲会病院に赴任したのはアメリカ留学後に、母校である山口大学の先輩にあたる当時の副院長から「脳神経外科がないので立ち上げてほしい」 と声をかけていただいたのがきっかけです。私の研究における専門は脳腫瘍でしたが、名古屋徳洲会病院では患者さんが多い脳卒中、特に動脈瘤を治療することになりました。当時、脳動脈瘤の専門家で、藤田保健衛生大学の教授だった佐野公俊先生が当院に勤務されており、脳動脈瘤手術の指導をしてくださったのは奇遇でした。実は、私にとって佐野先生は恩師であり、恩人でもあります。私が医師を志したのは、小学生のときに祖母が脳腫瘍になり、藤田保健衛生大学病院で執刀してくれた先生に憧れたからです。佐野先生に指導を受けていると両親に報告すると、佐野先生が祖母の執刀医だと教えてくれました。

私は医師として「手を抜かない治療」を心がけています。手術には、全力を尽くしてしっかりやり遂げる強い意志が大切です。治療の途中で、これくらいでいいかと少しでも思ってしまうと、手術の腕も上がりません。ライフワークだと思っていても油断すると、つい楽な方に流される気持ちが湧いてくるものです。どんなときも 「手を抜かない治療」は、佐野先生の教えです。患者さんやご家族のお顔を想像し、この人を元気にするために逃げてはいけないと自分を奮い立たせ、毎回の手術で佐野先生の言葉を思い出しています。

例えば、脳や血管の解剖学的な構造が複雑で、動脈瘤にたどり着くのさえ困難なとき、合併症が起きないよう注意しながら、手術をやりとげるには気力が必要です。脳動脈瘤をそのままにすれば、いずれ破裂するかもしれません。くも膜下出血で搬送された方の命を救うには、根治する必要があります。難易度が高くても、常に力を尽くす強い思いで手術しています。

佐野先生は開頭手術がご専門で、私に脳動脈瘤クリッピング術のいろはを教えてくれました。時代の変化で、今は頭を開かない脳血管内治療をはじめ、侵襲性の低い治療が主流になっています。先生の精神や引き継げる 技術を後進に伝え、カテーテル治療といった新しい分野で、当時の佐野先生のように、脳神経外科を牽引するような医師になりたいと思います。

患者さんに寄り添い、よりよい脳神経外科医を目指す

当院の脳動脈瘤外来を受診した方には、まずMRIや造影検査を受けていただき、手術する必要のある、5mm以上で破裂するリスクがある症例か判断します。さらに年齢や体調、併存症の面で手術可能であるか検討し、患者さんとお話しして手術を希望される場合は、入院手術を計画する流れです。

脳動脈瘤外来は予約制なので、基本的にはかかりつけの先生で動脈瘤の疑いや診断がついた方、あるいは健康診断や脳ドックで指摘された方が来られます。私の脳動脈瘤外来では、どのような動脈瘤の患者さんもお受けしています。例えば、難易度が高いので手術できないといわれた方、宗教上の理由で輸血ができない方も基本的に断りません。1、2mmと小さくて手術にはならない動脈瘤の方は経過をフォローして、生活指導や保存的治療をしています。

患者さんからは、手術で起きる合併症の程度をよく聞かれます。どんなに頑張っても統計上、5〜7%の確率で合併症が生じる可能性はあります。若くて元気な方と高齢者の患者さんでリスクは変わりますが、ゼロにはなりません。私たちは、合併症が起きないように努力を続けています。私を頼ってきてくれる患者さんにとって、よりよいドクターになれるよう力を尽くします。

患者さんやご家族は脳動脈瘤があると分かると、たとえ3mm程度の大きさで破裂する可能性が1%以下と言われても不安になるものです。脳動脈瘤が10mm以上でいつ破裂するか分からない状況であれば、どんなに心細いでしょう。私は患者さんの気持ちに寄り添い、心の支えになれるよう一緒に不安と戦って、しっかり治療していくと外来でお話ししています。

外来の患者さんには「次回もまた、元気なお顔を見せに来てください」と声をかけてきました。当院に来られた患者さんに、いつまでも元気で通院していただけるよう精進します。ぜひ、多くの患者さんに、信頼して受診していただきたいと思います。

脳神経外科を志す 医学生、研修医の先生へ

各分野ではばたく留学仲間の活躍が励み

名古屋徳洲会病院に赴任する前、私はアメリカで5年間、留学していました。米カリフォルニアにあるシダース =サイナイ・メディカルセンターで、脳腫瘍でもっとも悪性度が高い神経膠芽腫の治療法の開発を研究していました。脳腫瘍に薬を到達させるためのドラッグデリバリーと免疫治療が専門です。

同時期に留学していた脳外科医のコミュニティは、今でもつながりがあります。苦楽を共にした仲間が大きな病院の主任や教授になり、それぞれの分野で羽ばたいているのをみると、自分も負けていられないと励みになります。海外を目指す医師のモチベーションは高く、いい刺激を得られる環境でした。若い先生に、一度は留学を経験してもらいたいと思います。縁があって当科に来てくれた先生にはできる限り私の経験や技術を伝え、他の分野に飛び出すときは応援しています。

高い理想を持つ医師の期待に応えられる環境

私は脳血管内治療を専門にしていますが、脳神経外科は他にも開頭術をはじめ脳腫瘍や脊椎、パーキンソン病に対する手術など、さまざまな分野があります。自分ではできない治療を若い先生に学んでもらい、病院を越えた脳神経外科のチームを作るのが、この先10年から20年の目標です。今、大学病院に送っている先生は良性腫瘍に対する頭蓋底手術に関心があり、研修を受けています。私がメインで治療していないサブスペシャリティを牽引してくれたらと、期待しています。

最近、若い先生が増えて活気のある医局になってきました。350床の総合病院にある脳神経外科としては、年間の手術数が350から400例、動脈瘤は約50例と症例数が多く、意欲的な医師が集まっています。

徳洲会病院は、今の時代では珍しいくらい熱心に働く先生ばかりです。診察や手術、急患の対応といった医療に天職として真剣に取り組み、患者さんに尽くすのが好きな医者の集団です。私たち脳神経外科のチームだけではなく、病院全体が医療に対するモチベーションの高い先生の期待に応えられるでしょう。高い理想をもつ先生は、ぜひ私のところで修行を積んでもらいたいと思います。

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